皆さんは「税理士」と聞くと、どのようなイメージを思い浮かべますか?あまり馴染みのない方にとっては、“ 常に数字と向き合っている ”や” 口数が少なく厳しい ”、” 敷居が高い ”などの印象を持たれると思います。今回ご紹介するのは、氷見市と富山市に事務所を置く「税理士法人 田中会計」さん。中小企業への経営支援を目的として、昭和61年2月に開業しました。氷見事務所(氷見市窪)の外観「人との関わりを最も大切にする税理士」代表の田中宏昌さん(写真下)ならびに職員さんからお話を伺ううちに、従来の税理士像とは異なる、新しい時代の税理士像が浮かび上がりました。“ 先代から受け継がれる「地域ファースト」の想い ”日本における中小企業の割合は99.7%を占めていると言われています。地方企業の経済活動が日々の暮らしと密接に関わるからこそ、経営理念の1つ目は「地域」に重きを置いています。「『地域社会の発展に貢献しよう』という経営理念は、先代の父が創業時に決めたもので、今も大切に引き継いでいます。地域社会は、人との繋がりで成り立っていますよね。経営者にとって何でも相談できる立場にいる私たちは、経営の課題から家庭の心配事に至るまで、様々な問題を一緒に解決していきます」一人ひとりの真摯な表情から滲み出る「人」を大切にする心。地域発展への第一歩は、人の話を聴くところから始まります。「税理士は会計や税務を扱う職業という認識が一般的にありますが、(会計・税務は)私たちが行うべき業務の一部分だと思っています。孤独になりがちな経営者に寄り添い、話を聴いて、前向きな気持ちになってもらう。それが税理士だからこそできる仕事だと思いますね」田中さんの高校時代、お客さんの娘にあたる同級生から「いつも職員さんにはお世話になっています」と声をかけられたそうです。地域との距離の近さを実感した瞬間でした。「従業員や取引先、その家族、ひいては地域で暮らす人々へ、良い影響を与えられる経営者が増えたら、地域はもっと元気になっていくはずです。そのために、私たちも日々学び、成長する努力をしています。お互いに良い影響を与え合う関係が、地域発展に繋がると考えていますね」様々な分野の書籍が所狭しと並べられた会長室の本棚“ 聴いて「共感する」から築き上げる信頼関係 ”田中会計としての仕事は「聴く」ところから始まります。そこから地域発展まで至るには、どのような価値観が根底にあるのでしょうか。「大切にしている価値観は、人の話を聴いて 『共感する』ことです。共感したうえで、問題解決に向けた行動を起こす。その結果、解決できたら感謝されますし、お客さんとの信頼関係も強くなります」本心がなかなか見えない人、感情的になってしまう人など様々な人がいるなか、地道な努力によって信頼関係を築いていきます。「やはり皆さん不安を抱えていると思います。何回も話を聴いて、不安を解いていくのが大事です。例えば、話を聞く時間を多めに取ったり、話しやすい環境を用意したり、色々工夫しています」話を聴く行為は、相手の表情を読み取ったり、聞きづらいことを質問したりする労力の要る作業です。しかし地道な努力の積み重ねが、税理士事務所を越えた強みをもたらしました。「創業してから36年間、話を聴いて共感して行動することをひたすら繰り返してきました。その結果、お客さんと強い信頼関係を築けただけでなく、経験やノウハウの蓄積によって、『柔軟な対応力』も備えることができました」親身になって話を聴くからこそ、大中小の様々な相談をしてもらえる。現在は、他分野の専門家とも連携して、ワンストップで課題解決できるチーム体制を整えています。“ デジタル化によって変化する世の中で大切なこと ”田中さん自身、情報処理安全確保支援士の資格を持っており、ITやデジタル分野にも精通しています。そのような背景から、デジタル会計ツールの導入支援なども積極的に行っています。「会計のデジタル化は、ちょうど岐路に立っているので積極的に行うべきですね。フィンテックと言われるもので、例えば銀行口座やクレジットカードの取引情報をデータ連携して会計処理します。クラウド会計ソフトはそのひとつですね」令和5年10月から開始予定のインボイス制度にあわせて、デジタルインボイスの導入準備が政府で進められています。これまでは紙を介して会計処理していたものが、デジタルデータを使って完結するペーパーレスかつキャッシュレスの時代。今まさに訪れようとしています。DX(デジタルトランスフォーメーション)により、様々なものを効率化し生産性を高めていく一方で、田中さんは「人間ができること」を大事にしていくべきだと強調します。“ 未経験や異業種からでも成長できる教育環境 ”当所では、税理士としてのキャリア形成をしやすい環境が整っており、新卒で入所した税理士希望の方や、元々は公務員希望だった方が経験を積んでいます。ここからは、税理士の職員さんからお話を伺います。大嶋一広さん(入社12年目)ー 新卒で入所されたとのことですが、はじめはどのような業務をされていましたか?「まだ専門知識はなかったので、当時は業務補助と簿記の勉強をしていました。会計処理のお手伝いをしたり、お客さんの困りごとを聞いたりする仕事内容ですね。ちなみにお客さんへ伺う時は、必ず上司がついてきてフォローしてくださいました。あとは、教育係がついて色々丁寧に教えてくれたりと、教育制度がしっかりしている印象がありました」ー 税理士になった現在はどのような業務をされていますか?「会計や税務の仕事は基礎としてあるのですが、昔と比べてだいぶ変わってきました。(会計・税務の業務は)お客さんと接するための入り口のようになっていますね。今は、作成した決算書や財務諸表をもとに、資金調達や金融商品、事業承継などに関する提案の仕事が中心になっています」自分自身の力量で業務を行えるようになるには3年ほどかかるとのこと。経験を積んで成長するほど、より難易度の高い案件を任されていきます。西野勝紀さん(入社26年目)ー 日々の業務で大切にしていることを教えてください。「通常の業務は、リモートのやりとりで完結する場合も増えてきました。しかし、お客さんと深いところまで向き合うには、対面で何回も言葉を交わすのが大事だと思います。親密な人間関係を大切にしつつ、一歩引いて物事を見る専門家としての冷静さを意識していますね。バランスが大切です」ー 田中会計という税理士事務所は、どのような人に向いていると思いますか?「先ほど大嶋が申したように、教育制度は十分整っているので、未経験からでも大丈夫かなと思います。それでも、自分で基礎知識は勉強する必要があるので、向上心があり自発的に行動ができる人が向いているかなと感じますね」“ 女性も安心して働ける職場環境 ”女性の税理士や職員も多数在籍女性の税理士職員さんから見た職場環境は、どのように映っているのでしょうか。お話を伺いました。吉岡みどりさん(入社11年目)ー 就職を決めた理由は何でしたか?「以前は東京の事務所で働いていましたが、親の都合もあって地元の高岡へ帰ることにしました。しかし、高岡周辺で色々探してみても、勤務体系や福利厚生の面で自分に合うところがありませんでした。氷見まで目を向けてみると、弊所の求人情報には育児・介護休業制度などの記載があり、ここなら安心して仕事を続けられるかなと思い就職しました」ー 実際に働かれてみていかがでしたか?「実際に育児休暇を取らせていただきましたし、今も小学生になった子供の状況に応じて時短勤務やテレワークを利用しています。一般的には、制度が充実していても、周りの目が気になって休みづらいみたいなことがあると思いますが、全く感じないですね」“ 氷見発、北陸イチの専門家集団へ ”今後デジタルツールが普及し、税理士としてのあり方も変わっていくと予想されるなか、組織としてどのような展望を持っているのでしょうか。「会計作業はデジタル化によって簡単になります。そうすると、” 財務情報以外の会計 ”を行うことが重要になります。非財務情報の開示は、企業としての強み・弱みを明確にしたり、環境やSDGsに対する取り組みを発信したりと多岐に渡ります。既にそれらの情報が重要視されてきているので、私たちもどんどんシフトしていきます」会計という言葉は、利害関係者へ報告するという意味を持っています。利害関係者が多様になった今日では、財務以外の情報こそが人の心を動かします。「デジタルで生産性を高めて、人間にしかできないことに集中する。繰り返しになりますが、それは話を聴いて共感して行動に移すことです。この先も生き残れる税理士になっていく。それが専門家として果たすべき責任かと思います」田中会計に根づく文化「チームワーク・リスペクト・ポジティブ・チャレンジ・プロフェッショナル」各専門分野の叡智が集まった多様な組織。それが田中さんが描く理想の形。新しい時代の専門家のあり方が、氷見から波及していきます。「私たちのやり方を氷見から広げていくことが、地域に役立つと考えています。同じ価値観を持った仲間をもっと増やしていきたいです」取材・写真・編集:TomorrowWorks.編集部※ 創業年数および入所年数は、取材当時のものです。<求人情報>● 税理士補助業務