「お客さまに優しく接してほしいですね。お客さまの悲しい表情や落ち込んだ表情を見るのは本当に嫌なんだ」そう真っ直ぐな眼差しで語るのは株式会社久保の久保昌也さん(代表取締役社長)。彼の脳裏には、会社としての“志”を決定付けた苦い体験がありました。「ひと昔前の住宅リフォームでは、お客さまと直接付き合いのある大工さんと、私たちが一緒に工事を行うことがよくありました。当時私が現場管理をしていた案件でも、キッチンシンクのリフォームを合同で行う形になりました。すると、現場に立ち会っていた依頼主の奥様が、大工さんに『作業台の高さをこれくらいにして欲しい』と要望を伝えた途端、『そんなことできないわ』と払いのけるように言ったのですよね。本当に印象的な場面でした」相手の気持ちを自分事のように想像できるひと、そういう人が「こころねが優しい」と言われるのかもしれません。穏やかな川面にゆらぐ季節の模様と溶け込むように、当社の事務所兼「こころリフォーム」のショールームは位置しています。2023年4月に創業90年を迎えた当社は、創業以来、まちの中心部を流れる湊川沿いの事務所からお客さまのもとへ出向いてきました。昭和8年春の湊川には、どのような景色が広がっていたのでしょうか。" 暮らしの発展と共に歩んだ会社の歴史 "株式会社久保の創業は、祖父の次作さんと祖母の芳子さんが事業を営み始めたところから由来します。当時の地方の暮らしは、社会インフラがまだ整っていないために貧しい状況が続いており、また働き方も工業化の影響で農業中心の生活から徐々に変わりつつありました。「私のお祖母さんは、富山県の福光出身ということもあって、養蚕の仕事をしていました。養蚕用機械一式を福光から氷見へ持ち込んで、生糸や絹の生産に取り組んだのが、商売の始まりと聞いています。すると次は、お祖父さんが薪や炭を販売する仕事を始めて、資材を氷見の山間部へ取りに行っては戻ってくる作業を繰り返していたそうです」時は流れて昭和30代後半になると、住まいのエネルギー源は、薪や炭からLPガスへと移行していきます。高度経済成長によって生活環境が大きく変わっていくなか、次作さんは氷見にLPガスを普及させる役割を果たしました。父の博義さんへ代替わりすると、市は下水道の普及を進めていきます。博義さんは氷見市管工事組合の初期メンバーに加わり、管工事の事業を請け負い始めます。「父の代では、汲み取り式だったトイレの水洗化など、下水道の整備を進めることで衛生環境の向上に貢献しました。さらには、和式から洋式トイレへの移行など、水まわりリフォームの提案を行うなかで、お客さまの生活がより快適になるためのお手伝いをしてきました」そして現在は、3代目にあたる昌也さんと息子の直也さんと一緒に、これまでお付き合いのあったお客さまに向けたリフォーム提案にくわえて、新規のお客さまへの提案も積極的に行っています。設備交換リフォーム専門店「こころリフォーム」(2017年オープン)久保直也さん暮らしの発展と共に歩んできた会社の変遷には、人々の生活を豊かにしてきただけでなく、お客さまの心に寄り添ってきた不変の歴史も含まれています。「昔は暑い日も寒い日も、重たいガスボンベを運んでいましたから、いつもお客さまから『家事を楽にしてくれて、ありがとう、ご苦労様です』と労いの言葉をいただいていました。なので、ガス時代からのお客さまとのお付き合いが1番長いですね。何か困ったことがあったら『とりあえず久保に聞いてみよう、まずは久保に任せてみよう』とすぐに私たちを思い出していただける信頼関係を築けていると思います」" 試行錯誤のなかで辿り着いた今のスタイル "「私たちの仕事は、お客さまの困り事や不便事を解決することです。設備の故障やメンテナンスが必要になった時に、素早く小回りがきいた対応がとても大事になります。なので、氷見市内のお客さんから『久保さんにお願いして良かった』と喜んでいただけるように日々頑張っています」いざライフラインに不具合が起きた時、日々当たり前のように使用していたもののありがたさに改めて気づく方は多いはず。だからこそ、常にスピーディな対応を実現するため、営業エリアを氷見市内に限定しています。「私が現場へ出ていた頃は、氷見以外の周辺地域でもお仕事をさせていただくこともありました。依頼されるのはとてもありがたいので、一生懸命に対応するのですが、距離的にどうしてもすぐに行けなくなる時が出てくると迷惑をかけてしまいますよね。心苦しい話で、遠方のお客さまの対応をしているうちに、氷見のお客さまのもとにもすぐ行けなくなるのです。この状態は本当に良くないので、現在は市内以外からのご依頼は『本当にごめんなさい』と謝ってお断りしています」<住まいのことで、お客さまのお役に立ち、喜んでいただく>という会社の方針は、従業員の行動にもしっかりと反映されています。直也さん「お客さまから多くいただく感想は、『困った事があるとすぐに来てくれてありがたかった』や『いつも親身に対応してくれる』、『アフターフォローもあって安心できる』といったお声です。どれも当たり前のことかもしれませんが、当たり前のことを当たり前にできるよう常に意識して行動しています」「市内のなかでは、おそらく自分たちがお客さまのところへ1番早く駆けつけていると思います」と直也さん迅速な対応の秘訣は、自社施工で水まわりの修理やリフォームを行っているからでもあります。素早い対応と確かな技術力が、お客さまから繰り返し依頼してもらえる信頼を築き上げています。昌也さん「水まわりのご依頼は、緊急性が高くて、次の日に回せないご相談ばかりです。なので、午前中にご連絡を受けたら、その日の午後に伺うスピード感でいつも動いています。あとは『午後1時から3時の間にいきます』と時間帯もお伝えしています。さらに『トイレの水が噴き上げています!』みたいな切羽詰まったご相談は、優先順位を変更して対処しにいきます。柔軟な対応ができるのは自社施工だからこそです」お客さまからの連絡は事務所へ集約された後、各従業員へ業務が振り当てられます。また、他の業者さんと共同で行う規模のリフォームにおいては、信頼できる協力業者に自ら依頼して工事を進めていきます。このように、お客さまを大切にしたい、という昌也さんの強い願いから、現在のスタイルは確立されました。" 先輩とタッグを組む現場 / 充実するワークライフバランス "当社の現場では基本、先輩と後輩の2人体制で作業を行います。互いに協力し合い、時には教え合いながら、住まいの困り事を解決していきます。齋藤さんは(写真下)、灯油ガスの配達から配管作業もこなすオールマイティな方。高校卒業後に入社し、今年の春で勤続10年を迎えました。齋藤さん「(入社して)最初の頃は、技術的なことはもちろん、お客さまとの接し方や話し方なども先輩と一緒に回りながら覚えていきました。人それぞれに仕事のやり方があるので、今でも勉強になっていますよね」一般的な「現場作業」や「配管工事」のイメージとは異なるのは、住宅のリフォームを手がける当社だからこその特徴です。直也さん「現場といえば、上下関係が厳しくて怖いイメージだったのですが、全くそんなことはありませんでした。むしろベテランの人からは『タメ口でいいから、どんどん意見を言って』と言われたのを覚えています」そんな風通しの良い社風は、長く働ける職場環境を実現しています。齋藤さん「自分が入社してからの10年間で、会社を離れたのは(結婚で他県へ引っ越した)男性1名のみで、離職した人はいないですね。今年定年になる人も20代から在籍しているそうです。社内で同じカルチャーや価値観をちゃんと共有できているからだと思いますね」もうひとつの特徴は、残業の少なさと余暇時間をしっかりと確保できる点にあります。大学卒業後に、県外で5年間ほど営業の仕事をしていた直也さんは、定時で帰れることに驚いたそうです。直也さん「氷見へUターンする前は、帰宅が夜8時や9時になるのは当たり前で、夜12時を越えることもよくありました。なので、定時ちょうどに仕事が終わって、まだ外が明るい状態で帰宅する日常に最初は罪悪感を抱くくらいでした。休日も会社から電話がかかってくることはありませんし、自分の好きなように休みの時間を使えるのは、魅力に感じてもらえると思います」" 氷見市内での密度をどんどん高めていきたい "今後の社会、そして私たちの暮らし方・働き方は、高齢化に伴う人口減少や、AIやIoTによる技術進歩、再生可能エネネルギーの普及などの様々な要因によって、大きな変化を迎えると予想されます。同様に、会社としてビジネスの仕方も変わっていくなか、今後どのような展望を描いているのでしょうか。昌也さん「私が社長になったタイミングでは、既存のお客さまに向けて仕事をしてきました。しかしこれでは、高齢化が進むにつれてお客さまの数がどんどん減るのは分かっていましたので、数年前から新規のお客さまの獲得に踏み出しています。ショールームができて5年になりますが、新しいお客さまが増えているのにくわえて、口コミや紹介からのお客さまも年々増えています。ですので、氷見市の人口減少分を補えるほどに、リフォーム事業が軌道に乗ったと考えています」「お客さまとのお付き合いを広げて、市内での密度をどんどん高めていきたい」と昌也さん直也さん「リフォーム事業がうまくいけば、仮に氷見市の人口が3万人以下になったとしても、会社はうまくやっていけると計算しています。それに、水まわりの仕事は今後も必ず残るのと、職人さんたちも高齢化していますから、配管を扱える人はこれからより求められるはずです。お客さまの困り事をお助けすることにやりがいを感じられる人にとっては、輝ける職場だと思います」.当社も今、世代交代の時期を迎えています。次の時代を一緒に歩んでいく新しい仲間に向けたメッセージをお届けします。直也さん「お客さまから『ありがとう』と言ってもらう、そのことがやりがいや働くモチベーションになる人と一緒に働きたいですね。未経験の方でももちろんOKです。入社後は常に2人でタッグを組みますし、必ず後に先輩がいるので、何かミスしても絶対すぐに助けてくれます。現場の仕事は、怖くないし、楽しい仕事ですよとお伝えしたいです」お客さまに「ありがとう」と喜んでもらえると自分も嬉しくなる。心の温度を感じられる日々はここ氷見にありました。インタビュー写真:藤田 義史その他写真:北條 巧磨取材日:2023年3月24日※ 創業年数および入所年数は、取材当時のものです。<求人情報>● 水回り工事・修理・配達員