氷見の魅力のひとつに、「山と海との距離が近い」という点が挙げられます。青々とした海の景色から緑豊かな里山の景観へ、15分ほど車で走ると、目の前の風景は次第に変化していきます。山と海を繋いでいるのは、道路だけではありません。氷見の土地は、計7本の二級水系が流れており、多種多様な生態系を維持する役割を果たしています。例えば、仏生寺川とその支川・万尾川には、国の天然記念物で環境省のレッドリスト(絶滅危惧IA類)に指定されている、”イタセンパラ”が生息していることで知られています。万尾川「山と海だけでなく、”全部が繋がっている”ということを皆さんに分かって欲しいです。私たちは、そういった取り組みしか行っていません。」森林資源である”木”を、私たちの暮らしへより身近な存在になるよう、様々な取り組みを行っているのは、岸田木材株式会社さん。今回は、まちの自然が循環していくことにやりがいを感じ、木の豊かさを暮らしへ届けられるよう働きたい人材を募集します。" 木は人間と一緒で"生き物"です "氷見の中心部を通る国道160号線、朝日丘の交差点を山手へ向かい、万尾川を沿うように真っ直ぐ進むと、「岸田木材」「ひみ里山杉」と大きく書かれた文字が目立つ建物が見えてきます。「創業の経緯は、京都の宮大工集団が氷見へ来た際、彼らへ木材を供給していたところから始まったそうです。」こう教えて下さったのは、岸田真志さん。創業100年以上にも及ぶ歴史ある会社の専務取締役を任されています。「創業してから長い歴史を持つのは、(トンネルなどの社会資本に用いられる)土木用木材の事業です。15年ほど前からは、建築用木材の事業も行っています。」一般住宅の内装やフローリングに使用される建築用木材は、私たちの生活にとって馴染みある存在と言えます。しかし、それらの建材は、海外産の比較的安価な木材や、集成材を代表とするエンジニアリングウッドなどが使用されており、本来は身近な存在であるはずの里山の森林資源とは、距離が生じてしまっています。こういった現状のなか、地元産材を積極的に利用し、持続性ある木造建築を行うことの大切さを伝えている岸田さんの考えをお聞きしました。「今の時代は、コストが最優先に来てしまいます。資材を扱う人にとっても、家を建てる人にとってもそう。安いのが良いという価値観では、準木材や集成材などが使われ、国内産や地元産材の優位性は下がってしまいます。木材を工業製品として扱うのは、良くないですよね。」一般的に、集成材などの製品は、割れや反りがなく品質が安定しており、好まれて使用される傾向があります。「『曲がっていたり、節があったり、割れていたりしたらダメ』そんなことを言っているのは、ナンセンスだと思います。それらを使いこなしていたのが、昔の人たちだから。木は人間と一緒で、生き物です。」価値観の在り方として異なる方向性を示すことと、なにより氷見の山を守っていこうとする信念から、2012年には「ひみ里山杉活用協議会」が発足しました。この協議会は、氷見市内外の林業生産者、製材所や工務店などで組織しており、岸田木材さんは中心的役割を担っています。「ひみ里山杉の特徴は、色味が綺麗なのが特徴です。薄ピンクがかった色です。軽さや柔らかさも特徴で、触るとあたたかみを感じます。他にも、クローン栽培(挿し木)による、個体差があまり無く似たような性質は、内装やフローリングに向いています。」ひみ里山杉実際に触ってみると、確かに表面が柔らかく手触りの良い印象を受けました。しかし、言葉を裏返せば、キズが付きやすいということでもあります。岸田さんによると、それも使う人間次第とおっしゃいます。「”適材適所”の言葉の通り、使い所を考えて工夫すれば全く問題は無いです。『お客様が何を求めていらっしゃるか?』しっかりとコミュニケーションを取り合えば、答えが見えてくるはずです。」それでも、生産者側が里山杉のメリットを熟知していても、私たち消費者が理解していないと、実際の建築に使用されることは無いでしょう。そこで協議会では、伐採体験やワークショップなどの開催を通して、私たちが木と触れ合い親しむことができる活動を行っています。こうして、地元産材の利用が促進されることは、地元の山が整備されることを意味し、最終的には自然環境の保全へと繋がります。その他、会社の事業内容として、バイオマス発電や製紙などに使用する環境用木材事業も行っています。繰り返しになりますが、これらの事業がひとつひとつ独立しているわけではなく、循環し繋がることで、氷見の自然の豊かさは維持されていきます。" 移住の理由は、私生活の充実のため "岸田木材さんでは、氷見市外のみならず、富山県外から移住された方が働かれています。これまで、計4人の方が移住し入社されました。そのひとりが、及川さん。休憩中の貴重な時間をいただき、お話しを伺いました。「働いてみて、若い人たちが働いている印象を受けましたね。以前に働いていた東北だと、50歳〜60歳代の人が多かったです。この仕事(製材業)は、若い人が就かない仕事でした。岸田木材は、若くて元気ですね。」氷見へ移住してきて、もうすぐ丸2年になる及川さん。私生活も充実されているそうです。「移住の理由は、私生活を充実させたかったからです。趣味のアウトドアを楽しみたくて。富山県は、立山連峰があって登山のメッカですよね。仕事ももちろん大事ですが、プライベートの方も大事なので上手く両立させています。」日々暮らしていると、仕事と私生活を切り離してしまいがちになります。しかし氷見では、自然の豊かさやまち機能のコンパクトさによって、「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)」が実現しやすくなっています。岸田さんは、進学と同時に氷見から都心部へ出て、Uターンされました。及川さんと同様、このまちの暮らしやすさについて教えて下さいました。「都心部は働く場所であって、住む場所ではないと思いましたね。やっぱり、職住が近いのはとても楽です。」例え、働く場所が決まったとしても、住む場所と自分の感覚が合わなければ、仕事を長く続けることはできません。岸田木材さんで働くことは、暮らし全体の豊かさを得ることに繋がると言えそうです。" 丸い木を四角くする "製材業の仕事は、『丸い木を四角くする』こと。岸田木材さんでの仕事は、丸太から製品になるまでの工程に関わる業務を担当することになります。工程間は、フォークリフトなどを使用するため、ハードな力作業はありません。業務上、大きな動力を持つ機械を使用するため、危険度が高い工程も存在します。初めのうちは、危険度の低い業務から慣れてもらい、製材工程を少しずつ勉強する流れになります。業務は危険度の低いものから。どのような人に会社へ来て欲しいのでしょうか?お伺いしました。「礼儀や報連相など、大人として当たり前の事ができる人に来て欲しいですね。その上で、協力して楽しく一緒に仕事をしたいです。」及川さんのような経験者から、新卒入社した社員さんなど、様々な方が働いている岸田木材さん。職場では、活気のある雰囲気が漂っていました。前述の通り、職住との距離が近い氷見では、自由に使える時間が増えることで、生活の充実度を高めることができます。自然に囲まれながら自分のやりたい事や好きな事をしたい人にとって、とても向いている職場と感じられました。" 木を植えた人の想いが受け継がれるように "今の時代、“地球環境問題”や”エネルギー問題”など、自分事として考えるべき社会課題が多く存在しています。森林資源を扱い、自然に寄り添う会社として、どのような展望を持っていらっしゃるのでしょうか?最後にお聞きしました。「これまでずっと取り組んできた、ひみ里山杉のブランド化をしっかりと定着させたいです。その為にも、木に触れられる機会をもっと増やせたらと思います。」また、木材資源に対する理解は、まだ不十分であるとおっしゃいます。「木を植えることは、長い時間軸で物事を見ることを意味します。例えば、エネルギーを確保したいからと言って、無闇に木を切って燃やし発電していては意味が無いのです。その木を植えた人の想いが、受け継がれません。」森林の再生と荒廃を繰り返してきた私たち。歴史を振り返っても、人間による森林資源の扱いは一貫性の無いものでした。バイオマスによる再生エネルギーへの期待が高まっているなか、これまでの努力を無駄にするようなことはあってはいけません。山の声を届け続けることは、まちのため、そして地球全体のためにとても大切なことです。山と海との距離が近いまち岸田木材さんで働くことは、自然の繋がりを肌で実感することに他なりません。あなたの働きによって、まちの自然は目に見える形で変化していくことでしょう。「川中」に位置するこの場所での仕事は、様々なことに貢献できる可能性を秘めています。氷見の山の声を届け、暮らし全体を豊かにする仕事を始めてみませんか?(2021/1/13取材 文・写真:北條巧磨)※撮影時はマスクを外していただきました。<求人情報>● 製材技能工