まちの中心市街地を通る薮田下田子線。氷見市出身の漫画家・藤子不二雄Ⓐ先生が生み出したキャラクターたちのモニュメントが並ぶ「まんがロード」を氷見駅方面へ通り抜け、国道160号線に沿うように進むと、「東工業」と大きく書かれた看板が見えてきます。社屋が位置する柳田周辺には、ドラッグストアやホームセンターなどがあり、利便性にとても優れた場所です。さらに、前方後方墳として日本海最大級の大きさを誇る柳田布尾山古墳があり、バラエティに富んだ土地でもあります。東工業株式会社さんが、氷見市幸町から柳田へ社屋を移転したのは1972年(昭和52年)。約50年もの間、この土地の変遷を見守ってきました。創業年数は約80年。お客様の幸せを第一に考え、『いいがにします』という信念のもと、総合建設会社という立場から氷見のまちづくりに携わってきました。3代目になる代表取締役社長を任されているのは、東秀佳さん。先代からのバトンはどのようにして受け継がれてきたのでしょうか?「元々は、左官屋さんだったらしいです。おじいちゃんの代から始まりました。創業したての頃は、戦争があり休業していたそうですが、再開する頃には沢山のお弟子さんを育て束ねていたそうです。一緒に働いていく為には、大きな仕事や数が必要なので、下請けの左官業から建築土木の仕事を請け負うようになったみたいです。」こうした歴史と確かな仕事の積み重ねから、地域に根付く会社として信頼される存在になった東工業さん。今回は、創業100年へ向け、これからの氷見のまちを共に創っていく人材を募集します。" 建てたら終わりでない関係性を大事に "東工業さんが手掛ける仕事は、大きく分けて3つのお客様へ向け行います。暮らしに寄り添う”住まい”の仕事、店舗から工場まで幅広い分野に対応する企業向けの仕事、そして私たちが日々当たり前に感じているインフラ施設を整備する仕事と、多種多様な業務を請け負います。地域から信頼される理由は、お客様の声にしっかりと耳を傾け、ご要望にあったものをお届けしているからこそです。「私たちの会社では、大手企業さんや設計事務所さんが手掛けるような規模でない小さな仕事も大事にします。例えば、廊下の端部をトイレにするリフォームや、お寺の手洗い場の改修、部屋の壁の一面だけを変更したい、石垣のヒビが心配であるなど、いろいろな依頼に対応しています。どのような依頼でも、よく考えて設計を行い、施工面で工夫し、発注者やお客様のニーズを満たす工事を心がけています。」次第に、大きな案件を任されるようになるそうです。「地元だと、建てたら終わりの関係ではないですよね。一生のお付き合いになります。お客様との関係もそうですし、他の業者さんとの繋がりも大事になります。また、何かトラブルが発生しても、すぐに駆けつけて対応できるのは、地元の会社の良さだと思います。」生まれ育った氷見を拠点に仕事をする上で、東さんが大切にしていることは、”地域との繋がり”です。人や会社間との繋がりはもちろんのこと、資材を使って施工する「川下」の立ち位置だからこそ、地域資源を積極的に利用し繋がることを心掛けていらっしゃるそうです。「例えば、県外業者へ物事を頼むと、お金は県外へ出て行きますよね。経済を循環させる為にも、なるべく地元の材料だったり、地元の業者と協力して行いたいという思いがあります。」「ひみ里山杉」を通した、まちの自然環境との繋がりも意識されています。「氷見の木材を使うことは、氷見の山を整備することに繋がりますよね。山を整備すると、川が綺麗になる。すると、氷見の海が綺麗になります。お金だけでなく、自然環境を含めた良い循環を生み出すよう頑張っています。」木材を使用する立場から、ひみ里山杉の魅力も教えて頂きました。「特徴のひとつに”柔らかさ”があります。フローリングとして使うと”あたたかみ”が出ます。柔らかいということは、中に多く空気を含んでいるという意味で、断熱性能を持ちます。(キズ付きやすいなど)短所は分かっているので、丁寧に扱ってお客様へお渡ししています。」東工業さんは「ひみ里山杉活用協議会」に所属しており、昨年は岸田木材株式会社さんなどと共同で伐採体験や木工作ワークショップを開催。実際に木と触れ合う機会を設けることで、私たち消費者と地元産材を繋げる役割も担っています。ウッドライフ ワークショップ2020 写真提供|東工業株式会社さらに、2020年終盤には、都市部からの移住者を対象とした賃貸住宅を建築する事業「ひみIJUヴィレッジ整備事業」のプロポーザルにも選出されました。地域との繋がりを意識されてきたからこそ、想いが伝わり実を結びました。こちらは、氷見市中央町にある店舗「考えるパンKOPPE」の設計者、建築家・能作文徳さんが設計協力されたプロジェクトです。単なる賃貸住宅としての建築ではなく、ひみ里山杉や黒瓦を使用したり、畑作業を行えるよう空間設計を工夫したりして、氷見での住環境をより肌で感じられるようになっているそうです。取材時は、施工着手したばかりでしたが、ここからどのような建築物が完成するのでしょうか。今からとても楽しみです。建築・土木の仕事にとどまらず、様々な業種の人と繋がることで信頼関係を築き、このまちに不可欠な存在となった東工業さん。氷見の未来を見据えるなかで、自社の未来も考える必要が出てきたそうです。" 創業100年へ向けた、若い力の必要性 "創業100年へ向けた会社のこれからを考えた時、東さんは「若い力」が必要とおっしゃいます。「若い力を育ていきたいです。ここ数年間、14歳の挑戦を受け入れたり、学校訪問などを行って採用活動に取り組むなかで、やはり学生さんは、高校卒業と同時に市外へ行ってしまう印象を受けました。だからこそ、高校でお話しする時は、『地元へ帰って来て下さい。』と伝えていますね。」取り組みの成果は現れ始め、来年度から10代の方が入社されるとのこと。しかし依然として、東工業さんだけではなく業界全体が、若年層の人材不足と就業者の高齢化による大量離職の問題を抱えています。「”施工管理”や”現場監督”という業種は、全国の業者が求めている人材です。経験者であれば尚更です。特に地方では、そういった人材を見つけるのは難しいです。」全国に目を向けると、業界経験者を対象とした募集では、高収入・好条件を提示されているとのことです。しかしながら、そうやって採用した人材が、地域で長い期間にわたり働いてくれる保証はありません。そうなると、氷見で暮らし働くことに、生きがいを見い出せる人に来て欲しいというのが、東工業さんの願いです。秀佳さんと一緒に働く、奥さんにもお話しを伺いました。「生活に潤いを求める人が向いているかなと思いますね。例えば、空き家一軒を借りて、自分の手でリノベーションするのが楽しいと思える人とかが合っていると思います。東工業での仕事と暮らしを切り分けずに生活できる人が向いていると思いますね。」空き家問題は氷見市の課題のひとつです。東さんご自身も、休日にはふたりのお子さんとモノ作りワークショップに参加されたり、氷見での暮らしを充実されています。モノ作りワークショップに参加する東さん親子「氷見は人と人の距離が近い感じがしますね。嫁ぐために氷見市外から来ましたが、そう感じました。また、車で市内を回れば、必要なものがすぐ揃うので不自由がないですね。ストレスなく暮らせます。」それでは、具体的な仕事面ではどうでしょうか?再び、秀佳さんに伺います。「私たちは、公共や民間工事の施工業務がメインなので、現場での仕事が中心になります。現場では対応しきれないことや、担当者やお客様のご希望を、設計図面にして施工する場面が出てきます。なので、図面を描くのが好きな人や、コミュニケーションを取りながらモノ作りを進めるのが好きな人が向いていると思いますね。」その他、設計・施工の前に行う現地調査では、ドローンや3Dカメラを使った撮影・計測を活用するなど、新しいテクノロジーを積極的に導入しているそうです。例えば、そういったテクノロジースキルを活かしながら、図面や工程表、書類作成などといった業務を少しずつ覚えていくのも良いかもしれません。東工業さんでは、資格取得といった技能向上に対して、手厚い支援を行っています。朝礼の様子氷見市と共に発展していく。インタビューの最後に、東さんはこうおっしゃいました。「この会社が、氷見で仕事をしていけるというのは、まちの存在があってこそです。まちが消滅してしまっては、働くことすら出来なくなる。なので、生き残るといった次元ではなくて、『氷見市と共に発展していく』という気概で頑張りたいと思います。」まちが消滅する。とてもショッキングな言葉ではありますが、実際、氷見市は「消滅可能性都市」(2010年から2040年にかけて、20〜39歳の若年女性人口が5割以下に減少する市区町村)と指定された経緯があります。つまり、このまま人口減少と高齢化が進むと、地方自治体の公共サービスは行き届かなることが予想されます。こうした社会問題は、住環境や地域のインフラに携わる総合建設業にとって、会社の将来を揺るがす懸念事項と言えるでしょう。しかし、インフラや建物の老朽化による維持修繕工事の需要増や災害時の応急対応など、地域における建設業の必要性は依然として変わらず、またこれまで以上に頼りにされることが予想されます。国土交通省の試算では、建設業における2015年度の技能労働者数と、2025度に必要な労働者数(建設市場規模から見込む必要数)を比べると、減るどころか最大約32%の増加を見込んでいます。その他、業界の ICT化促進など、若い人材が活躍できるフィールドは、今まで以上に広がっています。これらを踏まえると、東工業さんでの仕事は、様々な分野との繋がりによって新たな"まちづくり"に携われる可能性を秘めています。あなたの柔軟な発想を使い、氷見という"現場"で未来のまちを創造してみませんか?(2021/1/21取材 文・写真:北條巧磨)※撮影時はマスクを外していただきました。<求人情報>● 施工管理・現場監督(幹部候補)